12月6−7日の2日間,東京プリンスホテル・パークタワーにて,MATLAB EXPOが開催された.このMATLAB EXPOの一部として,技術者教育におけるツールを活用した授業や研究事例など,教育現場の現状と将来展望について紹介するという趣旨で,"Educational Conference"が開催された.企業や大学から数名の講演者が招待されたわけだが,なぜか,その中の1人になってしまった.
与えられたお題は,「理論と実践(モノ),ツールの連携」だ.大学での講義の中で,MATLAB/Simulinkを活用しているとはいうものの,改めて話をしろと言われると,何を話すべきかがよくわからない.講義の内容を話すのも1つの方法だが,予想される聴衆の中には,プロセス制御を知っている人なんてほとんどいないだろう.そうすると,講義の内容を話しても仕方がないように思える.では,どうするべきか.
相当に悩んだ挙げ句,人材育成担当者を含めて企業からの参加者が多いに違いないと考え,これまで企業のエンジニアを対象に講義や演習を実施してきた経験をふまえて,技術者や研究者の教育について感じていることを話そうと決めた.
まず,カンファレンスの主題が「技術者教育」であるから,「技術者教育」とは何であるのかという点を確認しておく必要がある.広辞苑で調べてみると,技術者とは,技術を職業とする人.教育とは,教え育てること,人を教えて知能をつけること,そして,人間に他から意図をもって働きかけ,望ましい姿に変化させ,価値を実現する活動とある.また,技術とは,科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し,人間生活に利用するわざとある.
さて,その技術者教育をしようというのであれば,科学を実地に応用する技術者としての望ましい姿を明確にしておかなければならない.これを抜きにして,技術者教育ができるわけがない.大学の教員がなすべきこと,あるいは学生がなすべきこととして,私の意見はこの独り言でも,2003年12月14日の「大学の教官がすべきこと」,2003年05月03日の「大学で何を伝えるべきか(2)」,2001年03月24日の「大学で何を伝えるべきか」などで述べている.
まとめると,大学を卒業する最低限のレベルとして,
が不可欠と考える.その上で,研究者・技術者として,
ことが必要だろう.在学中に,これだけできるようになっていれば,どこでも何でもできるだろう.まあ,技術者ならぬ技述者かもしれない大学人の言うことだから,あてにはならないが...
あと,教育を意味のあるものにするためには,とにかく,教育を受ける側のモチベーションを高めることが何よりも重要だろう.その上で,より効果的に教育を行うために,ツールの活用を検討することとなる.
さて,本題の「理論と実践(モノ),ツールの連携」については,ここでは詳しく書くことはせず,講演で使用したスライドをリンクしておく.参考になれば幸いである.