4日間にわたる国際会議ADCHEMも無事終了し,いよいよ帰国だ.ここからが途方もなく長い.フライトスケジュールは以下のようになっている.
<フライトスケジュール>
April 06 18:30 Porto Alegre発 Varig Brazilian Airlines
April 06 20:05 Sao Paulo着
April 06 22:55 Sao Paulo発 Delta Airlines
April 07 07:30 Atlanta着
April 07 10:25 Atlanta発 Delta Airlines
April 08 13:25 Tokyo-Narita着
April 08 19:10 Tokyo-Narita発 All Nippon Airways
April 08 20:20 Osaka-Itami着
ポルトアレグレ空港を18:30に出発するフライトを予約してあるのだが,ポルトアレグレ市街に足を運ぶつもりもないため,時間がありすぎる.ホテルから空港へ向かうシャトルバスは,9:00にホテルを出発して,11:00に空港へ到着する予定だ.そこで,空港に到着後,より早いフライトに変更して,サンパウロ空港で時間を潰すことにした.サンパウロはブラジル最大の都市だから,空港施設も充実しているだろう.加えて,乗り継ぎに予想以上に時間がかかるかもしれないし,サンパウロに向かうフライトが遅れる恐れもある.実際,往路のサンパウロからポルトアレグレに向かうフライトは出発が1時間ほど遅れた.ブラジルは初めてで事情がよくわからないため,安全の面からも,早いフライトに変更しておくのが無難なようだ.
予定通り11:00頃にポルトアレグレ空港に到着した後,Varigのチケットカウンターに向かう.カウンターでチケットを見せて,早い便に変更したいと告げたところ,「12時の便があるが,満席で変更は無理ね.」とのこと.万事休す.
仕方がないので,18:30の便にチェックインしてスーツケースだけ預けてしまおうと,行列に並びながら,出発便リストを眺めていたところ,サンパウロ行きの便は12時以外にも複数あることに気付いた.12時以降のフライトも空席がないか確認してもらわないといけない.そこで,再びチケットカウンターに向かう.再度,早い便に変更したいと告げたところ,今度は「14時の便があるが,満席で変更は無理ね.」とのこと.他にもフライトがあることを知っている私は,「他のフライトはどう?」と尋ねた.すると,その女性は,「確かに,いくつかフライトはあるけど,サンパウロの空港は2カ所あって,国際線に乗り継ぐのとは違う空港に行くことになるわよ.しかも,空港は結構遠いわよ.それでもいい?」と教えてくれた.英語の通じない国で,目的地と異なる空港に行ったりしたら,どんな酷い目に遭うかわからない.「いや,違う空港には絶対に行きたくない.」と答えて,その場を立ち去った.
当初の予定通りのフライトで潔くチェックインすることにして,Varig Brazilian航空のチェックインカウンターに戻る.係のお姉さんにチケットとパスポートを渡したところ,「随分と遅いフライトね.早いのに変更したい?」と尋ねられた.「もちろん.できることなら早いフライトに変更して欲しい.」と伝えると,カチャカチャとキーボードを操作して,空席を探してくれているようだ.一瞬の間の後,「14時のフライトがあるんだけど,残念ながら満席ね.他にもサンパウロ行きのフライトはあるけれど,あなたが行きたい空港とは別の空港になるわ.2つの空港は結構離れているけど,それでも行く?」と聞かれた.それだけは,ありえない.「いや,違う空港には絶対に行きたくない.」と答えると,「それじゃあ,試しにウェイティングリストに名前を載せておく?」とキャンセル待ちの可能性を示唆された.どうせ空港にいるのだろうから,キャンセル待ちをして困ることは何もない.イエス!と即答する.お姉さんは,リストの一番上に私の名前を書き,「それじゃ,1:30に,ここに戻ってきて.名前を呼ぶから.多分,乗れると思うわよ.」と教えてくれた.
1:30まで,まだ2時間近くもある.お腹もすいてきたし,まだ現金も残っているので,食事でもしようと,スーツケースを転がしながら,空港内をブラブラと歩いた.折角だから,ブラジルっぽいものにしたいと思うが,ファーストフードやカフェか,高そうなレストランばかりが目に付く.あてもなく彷徨っていると,空港の一番隅に,カフェテリア形式の店を見付けた.結構込んでいる.これは当たりかもしれない.何よりも,メニューではなく,現物を見て選べるのが嬉しい.料理は,これまで食べたものと大差ない.パサパサした白いご飯か焼き飯(?),サラダ各種,それに何種類かの肉だ.グラマドやポルトアレグレのある州は酪農・畜産が主要産業のようで,肉料理が美味しくて安い.ここでも,煮込まれた大きな牛肉の塊を皿に取った.それに,サラダとご飯と缶ジュース.これだけで,R$8(約400円)ほど.のんびりと食事をしながら,時間が過ぎるのを待つ.
1:25.チェックインカウンターに戻る.キャンセル待ちをしている様子の人達が何人かたたずんでいる.ボケーッとしていたら誰かが助けてくれるという所でもないだろうから,カウンターで「先刻ウェイティングリストに名前を載せてもらったのだが,そうすればいい?」と確認する.その女性(隣のカウンターにいた)は私のことを覚えていたのか,「あ〜.あと5分ここで待って.」と答えた.
1:30.まだアナウンスがない.スーツケースを預けないといけないのに,出発まで30分で大丈夫だろうかと不安を感じる.
1:35.紙を手にしたその女性が,「え〜,マナブカノウ?」と名前を呼びながら,こちらを見た.イエス!と返事をしながら,カウンターに進む.キャンセル待ち成功だ.
スーツケースを預け,手続きを済ませて,指示されたゲートへと向かう.ところが,セキュリティチェックで長い長い行列ができている.こんな行列に並んでいたら,どう考えても間に合わない.チェック装置の近くで行列の整理をしている女性に,搭乗券を見せながら,「出発まで時間がないから通して欲しい」と頼む.が,英語が通じない.意味不明の言葉で,しかし身振りは明らかに,「行列に並べ」と語っている.ショックを受けたその瞬間,「Hi, Manabu!」と後方から声が聞こえた.同じ国際会議ADCHEMに参加していたマルコだ.マルコとはオハイオ州立大学つながりで知り合いになった.彼も今日ポルトアレグレを離れるようだ.マルコに「ここに入れよ」と言ってもらい,無事にセキュリティチェックを通過した.マルコも同じフライトを利用するようだ.ゲートに向かうと,既にボーディングタイムになっているはずなのに,行列がない.ダラ〜ッとイスに座っている人達ばかありだ.ゲートには,フライト情報を示すものがないため,不安そうにキョロキョロと周囲を見回すと,こちらに向かって手を振る人がいる.今回,恐らく僅か2名の日本人参加者のうちの1人,Sさんだ.その近くには,アルバータ大学の若いメンバー3人もいた.どうやら,間に合ったのは間違いない.
結局,ポルトアレグレからサンパウロへのフライトは1時間ほど遅れて出発した.たまたまにしても,初めて利用する航空会社で往復の2フライトども遅れたら,良い印象は持たない.18:30のフライトがどうかは知らないが,早いフライトに変更したのは正解だったかもしれない.
サンパウロではスーツケースをピックアップする必要はないとのことだったので,到着後そのままデルタ航空のチェックインカウンターへ向かう.が,カウンターがオープンしていない.デルタ航空のフライトは,午後のアトランタ行きがキャンセルになっており,22:55のフライトまでない.最悪,8時頃までカウンターがオープンしない可能性もある.サンパウロ空港の施設は充実しており,色々と見物して時間が潰せるだろうと期待していたのだが,見物するようなものは何もなかった.仕方なく,カフェのイスに腰掛けて読書に没頭する.
いつオープンするかも分からないので,時折カウンターの様子を確認しに行く.18時頃に見に行ったとき,ようやくカウンターが開いていた.スカイチームのエリート会員なので,ビジネスクラス用のカウンターで手続きをしてもらえる.エコノミークラス用の長蛇の列に並ぶ必要がないため,この特典は非常に有り難い.
チェックイン時に,預けた荷物の中身についていくつか質問された.それに答えると,行きと同じオレンジ色のシールをチケットに貼ってもらえた.このシールは,国際線の乗り継ぎで利用するだけのアメリカの空港で,荷物をいちいち受け取らなくて良いことを意味する.つまり,ポルトアレグレで預けたスーツケースは,成田空港まで直接運ばれる.その間,一度も顔を合わせる必要はない.
出国手続きを済ませれば,免税店などが色々とあって楽しめるだろうと期待していたが,その期待はあっさりと裏切られた.免税店がないわけではないが,しょぼい.レストランもない.それでも,再度外へ出る気力もないので,免税店でお土産を買い足し,後はゲートで時間を潰すことにする.既に,コーヒー,お茶,ビールなどをお土産に買い込んでいたが,空港の免税店でカサーシャというブラジルのお酒(さとうびきから作る蒸留酒)を購入した.国際会議のレセプションで一杯だけ飲んだが,かなり強い.こういうお酒は重いので,あまりお土産にはしないのだが,折角ブラジルまで来たのだからと,一本だけ持ち帰ることにした.もちろん,街のスーパーで買うより高いのだが...少しだけ残った現金でマンゴージュースとスナックを買い,ゲートでボーッとする.
サンパウロ発アトランタ行きのフライトは,ほぼ定刻に出発した.アトランタでは荷物をピックアップする必要がないため,入国手続きと出国手続きをサッサと済ませて,スターバックスでカプチーノだけオーダーして,ゲートへと向かう.アメリカの空港にも別に見るものはない.どこも似たようなものだ.
今回のブラジル往復では,機内で映画を沢山見た.普段はフライトで映画をあまり見ないのだが,流石に時間が長いこともあり,往路で2本,復路で4本の映画を鑑賞した.今回鑑賞した映画は以下の通り.
ナルニア国物語は往路でも復路でも上映していたので2回見た.確かに良くできたファンタジーなのだろう.原著を読んでみようかなと思った.ハリーポッターは,いくつか見たことがあるが,全部ではない.それほど興味があるわけでもないので覚えていない.サユリは機会があれば一度見てみたいと思っていた映画だったので,ラッキーだった.第二次世界大戦の前後,激しい人生を送る一芸者の話だ.映像の綺麗な映画だが,暗い話や悲しい話はこちらまで落ち込むので正直あまり好きではない.イーオン・フラックスはシャーリーズ・セロン(あってるか?)のアクション.近未来の話で,MATRIXみたいな感じの映画.正直,これが一番分からなかった.映画を見ると,英語力のなさを痛感する.Zathuraは双六ゲームの世界が現実になるという話.名前を忘れてしまったが,そういう映画が昔あった.それと同じ.
さて,アトランタから半日以上をかけて,無事に成田空港に到着した.グラマドのホテルを出発してから40時間ほどになる.南米のブラジルから帰国すると,検疫のために,黄色い申告書に何か体調に異常がないかを書かなければならない.「のどの痛み」という項目があったので,そこにチェックをしたのだが,「熱や何か変わったことはありますか?」という質問に「いえ,何もありません.」と答えると,それだけで終わった.引き続き,入国審査を受けて,バゲッジクレームへと向かう.まだターンテーブルは動いていない.
しばらくして,空港関係者と思われる人がターンテーブルの中央に立ち,人の名前を呼んだ.
「カノウマナブ様おられますか?」
それって私のことじゃないか.こんなところで名前を呼ばれるなんて一体どうしたんだ.何も悪いことをした覚えはないが...と心の中でつぶやきながら,「はい.私ですが...」と名乗り出る.すると,「申し訳ありません」という謝罪の言葉から,その男性の説明が始まった.
ロストバゲッジだ.前回のアメリカ出張に続けての災難.これで合計3回目.恐ろしく高いヒット率じゃないか.
ただ,ロストバゲッジというと,普通は自分の荷物がターンテーブルに出てこなくて気付くわけだが,今回は事前に宣告された.これまでとは,ちょっと状況が異なるようだ.説明を聞いてみると,どうやら,そもそもデルタ航空のフライトに荷物が載っていなかったようだ.つまり,サンパウロで既に荷物とはぐれていたことになる.断定はできないが,どうやらVarig Brazilian航空のミスと見て間違いないだろう.乗り継ぎには十分に時間があったはずなのだが...あるいは,ポルトアレグレでキャンセル待ちをした時点で既にはぐれていたのか.それでも,そのフライトは1時間遅れたのだから,時間がなかったわけではないはずだが...
ともかく,一日遅れの便でアトランタから運ぶ予定になっているとの説明で,成田空港到着後,税関検査を受けて,宅配便で自宅に届けてもらえるとのことだ.どうせ自宅に帰るだけなので,大きなスーツケースがない方が有り難い.非常に丁寧に謝っていただき,こちらの方が恐縮してしまった.このあたりの心遣いが日系企業の良さだろう.海外なら,「書きたいなら申告書に書けば?」みたいな対応になることもある.