2度目のロスト・バゲッジ
2005年10月30日(日)

学会に参加するため,米国オハイオ州シンシナティに来ている.何もないところだ.

午後1時過ぎに関西国際空港を離陸して,ノースウェスト航空のハブ空港であるデトロイトへと向かう.911同時多発テロ以降,便数が激減し,常に満員状態が続いていた北米路線だが,なぜか今回は空席が目立った.座席は36Dだが,中央の4人掛けに座っているのは2人だけだ.多少ゆとりのある機内で過ごせたのは幸運だったが,これはノースウェストが破産法適用を申請したことと関係あるのだろうか.

デトロイトで入国審査を受けることになるが,審査官に訪問目的を聞かれて,「学会参加です」と日本語で答えた.ハッと気付いて英語で言い直したが,それに対して審査官は「どこへ行きますか」と日本語で尋ねてくる.職業や所属機関もすべて日本語で尋ねられた.とても上手な日本語だ.これまでの訪米回数は数える気にもならないが,審査官と日本語で遣り取りしたのは初めてだ.

入国審査の他,デトロイトでは税関も通らなければならない.さらに,セキュリティチェックもある.ところが,デトロイトでの乗り継ぎ時間は1時間半もない.気持ちは焦るのだが,なかなかスーツケースが出て来ない.どうすることもできないので,ターンテーブルの側でジーッと待つ.ようやく姿を現したスーツケースを引き摺りながら,税関を通り,再び預ける.そして,セキュリティチェックの行列に並ぶ.モニターでゲートを確認し,早足でA50に向かう.どうにか間に合った.ゲートには既に,同じホテルに宿泊する予定のN先生がいた.

ゲートから一度外へ出て,徒歩で飛行機に向かう.非常に小さな飛行機だ.デトロイトからシンシナティまでは大した距離ではなく,利用者数も多くはないのだろう.搭乗した飛行機も空席が目立った.幸い隣の席には誰も座らなかったため,ここでもゆったりと座ることができた.離陸してから着陸するまで,地上を眺めていたのだが,地平線まで農場しか見えない.いかにもオハイオらしい.

シンシナティ空港は予想よりも大規模な空港だった.どうもデルタ航空のハブになっているようだ.エスカレータを上がったり下がったりしながら,バゲッジクレームへと向かう.無理矢理拡張したためなのか,いまいちレイアウトが合理的でないように感じた.既にデトロイトからの荷物はターンテーブル上を周回していたのだが,自分のスーツケースがない.

荷物がもう一周するまで待ってみたが,やはり自分のスーツケースがない.

あぁ,フィレンツェ以来,2度目のロストバゲッジだ.やはり乗り継ぎに失敗したか...

ノースウェスト航空のサービスオフィスに行き,スーツケースが出てこないと告げる.恐らく次の便で来るだろうとのことなので,滞在先のホテル名を告げ,レシートを受け取る.実は,ここで問題があった.滞在予定のホテルが買収され,名前が変わっていたのだ.ちなみに,今回ホテルを予約した「スカイゲート」からは,そんな連絡は何もなかった.ともかく,新しいホテル名で登録してもらい,スーツケースの無事を祈りながら,N先生と共に空港を後にした.

新しい名前になったホテルに到着後,しばらく休憩してから夕食に出掛けた.午後8時頃になり,そろそろ荷物が届いているのではないかと思い,フロントで尋ねる.ところが,「そういう連絡は受けていない.荷物が届いたら部屋にメッセージが行くから,それまで待て.」と言われた.仕方がないので,N先生の部屋でノースウェスト航空のウェブサイトを開いてもらい,"ラゲッジ・トラッキング"で状況を確認してみる.すると,「空港で荷物を確認し,配送手続き中」とある.さらに,「29日午後6時に発送」と書かれている.注意書きに,交通事情や時間帯により到着時刻は変わるとあるので,まあ明日になれば間違いなく到着するだろうと,一安心した.

ところが,日曜日の午前中にスーツケースは届かなかった.まあ,日曜日なのだから遅くなっても仕方ないなと思い,外出する.夕方,ホテルに戻ってきた際に,フロント横の荷物置き場になっている部屋の扉が少し開いていたので中を覗いてみると,そこに自分のスーツケースが置いてあった.やった!と喜んで,ベルボーイに「ロストバゲッジになっていたスーツケースが届いているはずだから,引き渡して欲しい.」と頼む.すると,そのベルボーイは「そのような連絡は受けていない.荷物が届いたら部屋にメッセージが行くから...」と昨日と同じことを繰り返す.「いやいや,俺の荷物がその部屋にあるのを見た!」とぶち切れそうになりながら反論すると,怪訝そうな顔をしながら部屋を開けてくれた.名前を確認し,私のスーツケースであることがわかると,「妙だね.そんな連絡は何もなかったのに.」とのことだ.もしかしたら,土曜日中に到着していたのかもしれない.

相手の言うなりになっていてはダメというのが教訓だ.ともかく,スーツケースも無事に届き,心置きなく学会に参加できる.

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