先日の独り言「それでいいのか.食育授業.」で,長男もそろそろ幼稚園のことを考える年齢になってきたと書いた.そんな折り,彼女が,彼女の友人が子供を通わせている幼稚園についての話を聞いてきた.
その幼稚園は公文式なのだそうだ.公文式の幼稚園があることすら知らなかったが,流石に公文式だけあって,幼稚園でありながら子供に勉強をさせてくれるらしい.公文式と言えば,全員が同じことを一斉に勉強するのではなく,個々人のペースに合わせて問題(プリント)に取り組むことに特徴があると思っている.その幼稚園でも,園児の進度に合わせて問題を与えるようだ.
さて,ここで問題が発生する.それは,園児によって進度が異なる,つまり,園児にランク付けがなされることだ.もちろん,幼稚園としては,ランク付けなど微塵も意図してはいないだろう.しかし,園児の親の中には,自分の子供が進んでいるのか遅れているのかを気にする人もいるだろう.そして,自分の子供が平均以上でないと気が済まない親もいるだろう.もしかすると,トップでないと気が済まない親すらいるかもしれない.実際,自分の子供のランクが落ちないように,家で必死になって子供に勉強をさせる親もいるとのことだ.勉強するのが嫌だと泣き叫ぶ幼稚園児に,無理矢理勉強させるというのだ.
ハッキリ言うが,そんな子育ては完全に失敗だ.修復不可能なキズを子供の心に刻むことになるだろう.嫌がる園児に勉強を強制する母親は,子供のために頑張っているつもりなのかもしれないが,結果的には,子供のランクが上がることによって,良い子育てをしている優秀な母親として,自分が社会的に認知されたいという欲求を満たそうとしているに過ぎない.そういう意図があることを認めたくはないことも,真剣に子供のために頑張っているつもりであることも,私は理解する.しかし,結果として,子供を追い込んでしまっている.
幼稚園ぐらいの幼い子供にとって,母親や父親はとても大きく大切な存在だ.それ故に,勉強しなさいと理不尽に強制されたとしても,親に喜ばれるためならと,自分の心を封印してでも親の命令に従うだろう.そんな従順で健気な子供は,親の目にも,周囲の目にも,親思いの良くできた子供と映るだろう.しかし,自分の心を押し殺してしまった代償は,いずれ払わなければならない時が来る.ある日突然,非行や暴力に走るかもしれない.抑圧され,心の奥底に封印されたものが,爆発してしまうのだ.そんなふうに子供を育ててはいけない.幼稚園児に勉強を強制するような育児は間違いであることに,母親が早く気付くことを祈るばかりだ.
なお,「子供に勉強を強制してはいけない」という主張は,長谷川氏の「お母さんはしつけをしないで」という本にも書かれている.この本は,単純に反早期教育を唱えるのものではなく,子供にどうしても厳しくしてしまう母親,育児に悩む母親に,もっと母親は気を楽にしていいのだというメッセージを送ることを目指している.また,そのために,厳しすぎるしつけによって子供が追い詰められた結果が,現在の悲惨な社会状況なのだということを示している.育児に関心があるなら,一度読んでおくと良いだろう.
ちなみに,彼女の友人は,子供のランクなんて全然気にしないらしい.だから,子供に勉強を強制することもない.しかし,子供同士が「お前は遅い!」とかお互いを比較してしまうそうで,それが嫌だと言っていたそうだ.それなら公文式幼稚園は嫌なのかというと,それ以外に良い面が多くあるので,第二子も公文式幼稚園に通わせることを考えているそうだ.