学会の国際化
2005年08月10日(水)

8月8−10日の3日間,岡山大学で開催された"SICE Annual Conference"(計測自動制御学会の年会)に参加した.

近年,この会議は国際化を目標に掲げており,今年は30%程度の論文が日本国外から投稿されたとも聞く.関係者の凄まじい努力が推察される.日本発の会議が国際的に認知されるというのは素晴らしいことだ.もちろん,国際化を目指しているわけだから,論文も発表もすべて英語である.

さて,会議の国際化が進むのは喜ばしいことではあるが,今回の会議では,その副作用も強く感じた.それは,あまりに発表のキャンセルが多いことだ.私が聴きに行ったセッションに関しては,とにかく中国からの論文発表が軒並みキャンセルされていた.セッションによっては,約半数がキャンセルなんていうのもあった.あまりに酷い状況だ.国際化というメリット以上に,会議の質が低下してしまうというデメリットが大きくなってはいけない.学会には,キャンセル数を減らす努力が今後求められる.

国際会議では,このような現象は別に珍しいものではない.以前には,東欧諸国の研究者が国際会議に論文を投稿するものの,国際会議には来ず,発表もしないというケースが目立った時期がある.結局,彼らは,会議の予稿集に論文が掲載されることが自身の研究実績として認知されるため,頑張って論文を投稿するのだが,ビザや旅費の都合で参加できないということだ.同情すべき状況ではあるのだが,国際会議の質を落としているのは間違いない.したがって,当然ながら,対策が講じられることになる.その対策とは,会議参加費(登録料)を支払わない限り,会議の予稿集に論文を掲載しないというものだ.こうなると,実績を残すためには,会議に参加する他ない.実際には参加できなくとも,少なくとも参加費は支払わなければならない.主催者側からすれば,少なくとも参加費の取りはぐれは防ぐことができる.今回の計測自動制御学会年会に限らず,中国から投稿された論文のキャンセルは結構目に付くので,何とかしなければならないだろう.

なお,この会議の会期中に行われた式典において,計測自動制御学会論文賞武田賞を受賞することができた.共著者と共に,アドバイスを下さった方々や関係各位に心より感謝するばかりだ.

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