図書館で,「ちょっと気になる!他人の給料」という本を見付けたので,ザッと目を通してみた.46種類の業界について,東証一部上場企業の中から知名度の高そうな代表的な企業を5〜10社選択し,平均年収のランキングを示している.その他に,初任給や財務データも示されている.まあ,データ自体は四季報等で簡単に入手できるものばかりなので,この本にそれほど価値があるわけではない.しかし,業界間や業界内の給料格差を一目で把握できてしまうというのは,なかなか面白い.
さて,とにかく最初に言っておきたいことがある.それは,46種類もの業界について記載されているにもかかわらず,化学産業(石油やエンジも含めて)が全く無視されていることだ.20年以上増収増益という驚異的な実績を残している花王のデータもない.財閥系化学会社のデータも当然ない.化学産業って,それほどまでにマイナーな存在なのだと痛感させられた...
平均年収の比較とは言っても,平均年齢がバラバラなので,そのまま比較することに大きな意味はない.そのことを理解した上で,いくつかのデータを紹介しよう.
まず,記載されている約280社の中で,平均年収トップはフジテレビの1497万円だ.テレビ業界は軒並み1300万円を超えており,改めて給料の高さを認識した.三井物産の1201万円を筆頭に,商事業界の平均年収も軒並み1000万円を超えて高額だ.続いて,野村HDの1194万円を筆頭とする投資業界.さらに,東京三菱の1189万円を筆頭とする銀行業界と続く.日本経済をガタガタにした諸悪の根源である銀行は,不良債権を抱え,税金を投入してもらい,給与カットなどをしても,まだまだ高水準だということがわかる.
その他,有名な企業では,トヨタ自動車が805万円,セブンイレブンが616万円,JALが999万円,伊勢丹が686万円,任天堂が831万円,吉本興業が652万円,ソニーが887万円など.
驚いたのは,ファーストフード業界だ.トップのマクドナルドが1055万円であるのに対して,2位のモスフードが544万円と,なんと2倍近い格差がある.マクドナルド,恐るべし.ちなみに,記載されていた企業の中で最下位はキャンドゥの301万円.ただし,キャンドゥの平均年齢は27歳と非常に若いことを付け加えておく.
業界別給料事情について独り言に書いたところ,読者から間違った認識をしているとの指摘をもらった.例えば,野村HDなどの持ち株会社の場合,傘下の企業を含めた全従業員の平均年収ではなく,企業群を統括する持ち株会社に在籍する極めて少数の従業員の平均年収となっているため,見かけ上非常に高い数字になるということだ.なるほど,その通りだ.そこまで考えていなかった.
この独り言を読んで,瞬時にそこまで考えられるというのは凄いと思う.ちなみに,指摘してくれたのは大学生で,投資銀行に就職するそうだ.納得.