講演
2003年10月25日(土)

昨日,化学工学会関西支部若手の会による大学見学会が京都大学で開催された.この大学見学会は学生による企画であるが,その特別講演を引き受けることとなった.人前で話すのは学会発表で慣れたものだし,嫌いでもない.しかも,日本語で話せば良いのだから,言葉の障壁もない.しかし,内容については大いに悩んだ.

今回の講演を聴くのは,30〜40名ほどの大学院生であるとのことだった.もちろん,全員が化学工学を専攻しているわけだが,異端である私の研究内容を,学会発表のように話したら,誰も理解できないのは明らかだ.そこで,理論の詳細には立ち入らず,研究の目的と成果,特に実プラントでの成功事例を中心に紹介することとなる.専門家でない聴衆を相手にする場合の常套手段だ.研究の目的と意義さえ理解してもらえれば,細かなことはどうでもよい.ところが,学生相手の場合は,これだけで十分とは言えない.

学生向けの講演では,彼らの人生に対するモチベーションを高めることが何よりも重要である.人生は大袈裟だとしても,彼らの視野を,そして可能性を広げるような講演でなければ意味がない.全員を感化するのは無理だとしても,講演を聴いてくれた誰かの意識変革に貢献できれば,それで講演は成功と言えるだろう.こういう観点で講演内容を考えることにしている.

2000年12月15日の独り言(学生へのメッセージ)に,かつての講演内容がまとめられている.この講演は京都大学の学部生を対象としているため,様々な大学院の学生に語るには相応しくない.大学院生なら既に自ら研究に取り組んでいるわけだから,もっとレベルの高い話をする必要がある.そのようなわけで,2003年05月03日の独り言(大学で何を伝えるべきか(2))などを読み返しながら,常々思っていることを語ることにした.

講演の出来映えについては,アンケート結果を教えてもらえるらしいので,それを参考にさせてもらおう.ところで,今回の講演よりも,もっと頭を悩ませる講演がある.12月5日に開催される化学工学会京都大会で,「研究フィロソフィーを語る」というシンポジウムで講演をすることになっているのだ.なぜ「フィロソフィー」はカタカナなのだろうかという疑問もあるが,そんなことを考えている余裕はない.一体何を話せば良いだろうか.これから1ヶ月間ほど,大いに悩み続けることになりそうだ.

講演といえば,11月上旬に東京ビッグサイトで開催される計測展2003TOKYOというイベントでも講演させてもらうことになっている.こちらは専門的な話で良いので気は楽だが,私みたいに無名な輩の講演を折角聞きに来てくれる方々を眠らせてしまうわけにはいかないので,周到に戦略を練る必要がある.これも頭が痛い.


10月29日(水)追記

講演会のアンケート結果を受け取った.以下に全文をそのまま記す.「熱いこと」と「わかりやすいこと」は私が講演の必須条件とする事項だ.難しい言葉で面白くもなさそうに語る講演なんて,お金をもらっても聞く気はしない.学生向けの講演として,今回の講演は成功と受け取って良さそうだ.ただし,なお一層の努力が必要だ.決して完成はしない.常に進歩しなければならない.

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