木曜日に,田中耕一氏の特別講義を聴いた.
講義開始時刻の40分前には会場に着いたにもかかわらず,既に物凄い数の人だった.大学の日常では,あのような講義はありえない.田中氏の人気とノーベル賞の凄さを改めて実感した.島津製作所の売り上げが良いのも頷ける.ボーナスに1億円ぐらいは出しても良いはずだ.
1時間ほどの講義だったが,私のような門外漢にも分かりやすく,非常に良かった.失敗がノーベル賞に繋がったという,マスコミでも大々的に取り上げられた話も聞いた.確かに失敗がなかったら大発見はなかったかもしれないが,失敗は発見の十分条件ではない.成功した最大の要因は,決して手を抜かず,真剣に貪欲に研究を行う姿勢にある.講演を聴いて,田中氏の研究に対する愛着というか,そういう雰囲気は十分に伝わってきた.それに,一緒に研究を進めた仲間や他の研究者への想い.「ノーベル賞をもらった自分だけが偉いんだ」なんてことが全くない.講演において,共同研究者を正しく賞賛してあげられる態度は実に潔い.凄い賞をもらうかどうかに関係なく,最低限のモラルの問題ではあるのだが...
講演の中で田中氏が,ノーベル博物館長の言葉として,個人としての創造性に必要なものを9つ列挙されていた.勇気,挑戦,不屈の意志,組み合わせ,新たなる視点,遊び心,偶然,努力,瞬間的なひらめき.
その他,「私はエンジニアであって学者ではありません」ということを強調されていた.世の中に役立つものを作り出すことこそが大切な使命であるとの認識だ.