クローン人間
2003年01月21日(火)

「日本人クローンを代理母が出産する」というニュースに目がとまった.実は,帰国便の中で読んだ USA TODAY 誌のカバー・ストーリーが偶然にも「クローン人間」についてだった.

今回報じられたニュースによると,事故死した子供を甦らせるために両親がクローン人間を作ることを要望したそうだ.実は,こういうケースが非常に多いらしい.海外では殺人事件の被害者なども多いそうだ.いずれにせよ,確かに同情の余地はある.クローン人間に関する議論となると,とかく倫理的・宗教的な論争に発展し,感情的な意見の対立を招きがちだ.しかし,そういう是非を問う論争は脇へ置いたとして,今回のケースの両親は以下の問題をどのように捉えているのだろうか.

  1. 亡くなった子供と同じ遺伝子を持っていても,人格は異なる.決して同じ人間ではない.その違いを受け入れることができるのだろうか.まあ,この問題を問えるようであるなら,極めて幸せだ.深刻なのは次の問題だろう.
  2. クローン技術は未確立で,極めて酷い欠陥を持って生まれてくる可能性が高い.クローン人間の出産が合法だとしても,一度生まれたクローン人間を殺したら殺人だろう.クローン家畜のように,欠陥のあるものは間引くというわけにはいかないはずだ.仮に重度の欠陥を持って生まれてきた場合に,その子の生命を維持するための医療費が数億円(非常に安く見積もって)という規模になったとして,両親には支払う覚悟があるのか.亡くなったかわいい我が子ではない,欠陥を持った全くの別人が自分達の前に現れるのだ.しかも,母親も自分で産むわけではない.

狂気の沙汰としか言いようがない.

【ニュース】
世界初のクローン人間を誕生させたと主張する新興宗教団体ラエリアン・ムーブメント(本拠・スイス)の関連会社クローンエイドのブリジット・ボワセリエ博士は20日、カナダのモントリオールで朝日新聞とのインタビューに応じ、「日本国内の某所で(日本時間の)21日にも、代理母が日本人のクローンベビーを自然出産する予定だ」と述べた。

ボワセリエ博士によると、数年前に事故で死亡した男児の体細胞を母親(41)の卵子へ移植してクローン受精卵を作り、代理母(25)の子宮に入れて妊娠させた。代理母は日本人ではないという。父親は40代の科学者で、男児が昏睡(こんすい)状態に陥った時、「クローン人間をつくって息子をよみがえらせたい」とクローンエイド社に要請。男児はその1カ月後に死亡したという。文部科学省生命倫理・安全対策室によると、クローン技術規制法は人間のクローン胚(はい)を母体へ戻すことは禁じているが、出産は規制の対象外という。

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