「仕事で成功したかったら目標を持つな」と言われたら,どうだろうか.多くは面食らうに違いない.生まれてから今まで,志の高い目標を掲げ,その目標に向かって一意専心,努力することが美徳であると教え込まれてきたのであるから,当惑するのも当然だろう.しかし,古い目標に固執すると,新しいチャンスを見逃してしまう.だから,大それた目標など持たずに,とにかく,いろいろなことを試してみること,そして,日々違う自分になろうと努力することが大切であると,「仕事は楽しいかね?」という本には書かれている.とにかく試すことが大事であるというのは,「宝くじは買わなければ当たらない」という事実に基づく.だが,試すためのアイディアがなければ,何も始まらない.次に考えるべきことは,成功への宝くじを買う回数をどうやって増やすかということ,つまりアイディアをどうやって生み出すかということだ.その本には,具体的な方法が書かれているので,興味のある方は読んでみるといいだろう.MSPからDTWへの2時間のフライトの間に読めるぐらいの手軽な本だ.
その本に書かれていた内容をもう少し紹介しよう.
人は目標を掲げ,完璧であることを目指すが,例えば仕事で「完璧」になるとはどういうことだろうか.自分が完璧になったと思えたら,その時点で進化が止まってしまうのではないだろうか.すなわち,完璧などというのは幻想でしかないのだ.実は,完璧であることは素晴らしいことではなく,むしろ退化のはじまりなのだ.だから,日々違う自分になること,日々さらに良くなることが目標となる.日々変化するためには,毎日何かを試みなくてはならない.これは相当大変なことだ.
もう一つ.成功するためには,どうすれば良いだろうか.多くの人は,勤勉であることによって成功しようとする.もちろん勤勉であることは必要だが,勤勉な人は世の中に掃いて捨てるほどいる.それだけでは成功は手に入らない.人並みがせいぜいだ.もちろん,人真似もダメだ.他人を凌駕する人物になるために,他人を真似てどうなるものでもない.大成功した人々は,偶然を,さらには失敗を味方にしている.だから,アイディアを生み出し,とにかく試してみることが大事だ.コカコーラやリーバイス,ポストイットの例を持ち出さなくても,最近ノーベル化学賞を受賞した田中氏もそうだ.実験の失敗をノーベル賞に結び付けた.だが,運が良かっただけではない.研究に打ち込み,チャンスをものにするだけの準備ができていたのだ.ボケーッとしているだけの人は,チャンスが目の前を通っても気付かないだろう.