本を読み,優れた経営者の考え方を学んでいると,共通点があることに気付く.今,世界最強の小売業者として君臨するウォルマートに関する本を読んでいるのだが,その中にドラッカーが指摘していた内容があった.それは,ある戦略や提案に対して何の議論もおきず,反対意見もなく,全員一致でその戦略や提案に賛成であるような場合,その戦略や提案を採用してはならない,というものである.そのような戦略や提案には,何か全員が見落としている重大な欠陥があるに違いないという立場だ.逆に,本当に良い戦略や提案には反対意見が出るものであり,徹底的に議論を行うことで,その欠点を洗い出し,真に優れた戦略や提案とすることができるということだ.そうすると,トップが部下の進言を聞き入れる度量があるかどうかが最大の問題となる.また,部下が自由に進言できるような風土があるかどうかが重要となる.そのような組織風土というものは,一朝一夕で作り出せるものではない.
米国では,ウォルマートが勢いづくのとは反対に,巨大なKマートが破産するに至った.その原因として,企業風土が指摘されている.本には,自由闊達に意見を言い合えるウォルマートに対して,上司の意見に盲目的に従うだけのKマートという対比で描かれている.もちろん,ウォルマートにしても,創業家の力があまりに強すぎて,公正公平な判断や行動がなされないことも少なからずあったようだ.しかし,外部から積極的に人材を登用し,その意見に耳を傾け,柔軟で強い組織を作り上げた.
イエスマンだけで取り巻きを固めるようなトップは大馬鹿者だと誰もが知っている.ところが,現実にはそういうトップがいて,その部下もいる.仕方ないことなのか.