2001年10月17日(水)
ノーベル賞の威力

ノーベル化学賞を受賞した野依教授が,「『50年でノーベル賞30人』という目標は国家として不見識きわまりない」と日本政府の姿勢を批判したそうだ.さらに,深刻な状況に陥っている日本の産業界を立て直すためには,まず,欧米とは比較にならないほど退廃している大学院教育を再建し,大学院をレベルアップさせる必要があると主張したそうだ.

ノーベル賞を受賞できるということは,それなりの功労があったということに他ならない.しかし,受賞した人が受賞していない人よりも優れているかと言えば,必ずしもそうとは言い切れない.絶対的で完全な評価がなされるとは信じられないし,ノーベル賞そのものが政治色の濃いものになっているという批判も耳にする.

ただし,ここで大事なのは,そういうことではない.西洋コンプレックスの固まりである多くの日本人は,欧米で高い評価を受けた人を偉いと見なすという事実に着目しなければならない.彼らは人を評価する能力がないので,他人が下した評価に従うしかないのだ.ノーベル賞ともなれば,受賞者は一夜にして,国家レベルの意志決定機関に属するようになり,日本国内のローカルかつマイナーな賞を数多く受賞するようになり,その発言は大きな意味を持つようになる.そのため,見識ある受賞者が声を大にして,正しいことを言うことが非常に重要である.普通人が正しいことを主張しても,無視されるか,抹殺されるかしかない.実際,名古屋大学の一教授が「『50年でノーベル賞30人』という目標は国家として不見識きわまりない」と主張しても,誰も聞く耳は持たないだろう.ましてや,新聞などで取り上げられることもないはずだ.

教育と研究に携わる者の1人として,正論を唱えることができる人に頑張ってもらいたい.声と態度だけでかい政治屋や役人に,日本を無茶苦茶にされるがままにしておいてはいけない.大学院の問題にしても,有名大学にお金だけばらまけば何とかなる話ではない.

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